接地面
僕がなりたかった何か
扉に手をかけ外へ
光は踏まれて軋み
そこで僕は息絶える
彼は季節の香りと風の色を知る
昨日を少しばかり思い出して重ねる
あの塀を水平線に見立てて
あの物語の既視感だけが
やけに低い音を鳴らしていた
いくらか幸せなことがあって
彼は今日も笑えるだろう
少しばかりの不幸せで
彼は今日も誰かを必要とする
まだ未来の賭けに負けることが許され
これまでで許せないことのいくつか
時折それらの重量感に負けて
振り返りながら
また扉に手をかけ
また扉に手をかけ
踏まれた影が痛む
その息絶えた方が
その残りカスが
僕の方
僕がなりたかった何か
彼が忘れる何か