坂
日が落ちた坂道を
父と母と
遅れて僕とで
下りていました
いつもより少し
手がかりをなくしていて
それで昔
夏と約束したことを
重しのような影を見て
思い出していました
ゆるやかな番狂わせが
今の歩調をつくりました
僕らの作る三角形は
ゆらゆらと陽炎のようで
だから
ずっとなくならない
白く
白く
思い出より
白く
ピンとしたシャツのように
この先のことをきれいにたたんで
思い出をたずさえて
生きていこう
これを僕は
きっと愛する人に
あげようとする
これ以上の景色を
僕はずっと知らないから