川辺

感動で人は生きていけると
言い続けて欲しかった

とても遠い星は千々に砕け
コンビニの袋が揺れる
君の手を思い出し
別れの予習を今もしてる

それらがずっと
信じらればよかったね
この世の誰もが不幸せを探して
ちょっとずつかじらなければ
本当のところ正常を保てない

お気に入りの本を
もう一度読み終わったときに
僕は感動しようとする
ずっと知らないふりをして
窓の外には空気が凪いでいる

泥はいつか僕を埋めるだろう
冬に嘘を伝えられないように

四隅をつかみきれず夜空

愛し合おうと言いながら
それはゾンビみたいな歩き方だね
まるで見解の相違が滑稽だ

色々と取り返しがつかなくなって
挨拶の言葉も忘れてしまったけれど
もうそろそろ
飼い殺しにしたそれが
僕ではないと気づいてしまう頃合いだろう

いくつかは願いが叶ったと言ったら
君はきっと笑うから
その雑巾みたいな愚かさを
僕は懐かしく思う

さようなら夏がまた来るけれど
シーツに入道雲をこぼしてしまったような
あの夏を
僕はいつか許すことができなくなる

ただただプールに惜敗をひとすくい
月が映って草の匂いに追い立てられて
誰も何も言わなくなったあの場所に

いつか夢が尽きたら
まだそこに浮かんでいる気がする

そういう郷愁が僕らをつないで
いつも夜空を閉じることを考えている

背中

僕が尊敬している人は
いつも夏の中にいる
強い光の中に

どこかで誰かが飽きるまで
スペースシャトルを飛ばそうと
汗とか涙とかを流しているんだ

食べ過ぎた夏は僕を飲み込む前に
もう諦めたような顔をする

階段の上の幽霊や
夜空のUFOを奪っておいて
僕に後悔を強制しようとする

草が伸びていくことを僕は成長だと思い
枯れることをを必然だと蔑んでいるのかもしれない
他人をそうやって見ていることを
僕は苦しむべきなのかもしれない

ここの窓はいつも僕と世界を魂だけでつなげる
ここからでは何も動かすことができないと
思い知らせようとする

とにかく光は強く
強い光の中で

僕だって日々の数だけ
失ったことにも気づいているさ

波打ち際

君がてんでバラバラに呼ぶ
僕の名前なんてものに
僕はいちいち思案しないけど

夜の景色はもう本当のところ
ずっと前に海の底に沈んでいて
その秘密を守り通すのに
みんな疲れ切っている

うつりこんだかわいそうな
星が近づいたり離れたりするけど
砂時計のように無関心でいる

何度目かの夜にのまれて
僕は僕の命の中にある
むかし名前があったエネルギーを振り絞る
そのうちきっと僕は冬の香りなんて
すっかり分からなくなるんだ

誰かの切実さにずっと憧れている
みんなも同じだから噂ができあがるんだろう

君の口からこぼれる僕の名前に
僕はまだ返事ができる

誰かの糾弾

希望だけを歌う歌を聞きながら
僕は誰にも与せず
墓場のことを考えていた

最大限に受け取れるものを
大切に受け取ろうとして
そのために混ざり続ける色が
どす黒くなっていくのを止められない

どうしてだろう
どうしてだろうと
打ちのめされながら
僕はそれでも
手を差し出したいと思う

それが夜空をすくい取る
傲慢だと気づくまでは

誰かが誰かを抱きしめるとき
僕はその人々をどう思うだろう
愛おしいと思いたいと思った僕は
まるで大理石のように無責任だな

見当外れの夜が
僕をごまかしていくのを
今日も知っているから
目を閉じてねむれる

つなぎあわせと
こじつけで
情けなさを合わせて
毎日を歩く

腹を抱えて笑った
頭を抱えて泣いた
でも枕からあげる顔は
だいたいつまらなそう

今日は何に心を開こうか

僕が必死に感じとろうとした
輝いている尊いであろうものは
僕以外の誰かもやっぱり感じ取っていて
僕はそいつを敬いたいと思った
ここに僕も生きていることを伝えたかった
檻を中から叩くようにさ

ねぇ
こうやってさ
全てはうやむやに
溶けることを許容して
生きていくんだろうか

現状に全く満足していない顔をして
満足しきっている人間に僕もなって
いっぱしに何かを待ってるフリをしている


2014/01/24に書いたものをサルベージ。

This man

壁に何千の 花を描いてさ
そこで人が 優しくなれるように
ようこそ 僕へ
僕は中にいるから

土の上に立つために 僕にはルールが必要で
そのうち何もないところへ行きたくなる
さよならの時に どうしようもなく
安心してしまうのは いつからだっただろう

何かを伝えられたわけじゃない
でも何も伝えたくないわけじゃない

届け 届け 届け
自分にも届かないことに
時々崩れそうになるけど

どうか どうか どうか
空を食いしばり 涙を握って
静かに叫び続けるよ

大切な言葉が 言えなかったのは
その日雨が 降らなかったせいだろう
どうぞ 自由に
僕は星を見ているから

ちゃんと壊さないように 初めから触れないことにした
不確かさを隠す表情はどうやったっけ
また会おうと 約束したけど
僕はまた 僕を作っていけるだろうか

気持ちが分からなかったわけじゃない
でも気持ちを分かって欲しいのも違う

留まれ 留まれ 留まれ
空虚が暴れ狂うたびに
横顔を見てしまうけど

どうか どうか どうか
空を食いしばり 涙を握って
静かに叫び続けるよ

壁に 花に 雨に 星に
本当は僕のすべてで
僕は僕を伝えようとしていて

気づいて なんて 勝手な 僕を
空の遠さへ 涙の深さへ
むせび歌い続けるよ

ようこそ 僕へ
僕は中にいるから

だから笑顔を

雨は振り返る

感情を殺したまなざしで

僕はまだ

空白を喘いで

泥水を踏んだりする

受け取れるわけもなく

受け渡せるものもない

いつかの雨の日に

僕に殺された感情は

道路脇に転がされて

汚水と混じり合い

自らを許せないまま

いつか流転して

きっと雨になるだろう

そして

僕は振り返る

そのときに

だから

笑顔を

たくさんの約束の腐敗を
怖れることも忘れようとして
お互いの魂が劣化する

歳をとったのだと笑いながら
誰が死神なのかと震えている

自分はいつか糾弾されるだろう
その食卓につかないことを
ずっと秒針の狭間で祈っている

自分を無条件で愛してくれる
都合のいい誰かを求めて
アドレス帳から品定めする

布団の衣ずれの音が怖い
その中身に何も入っていないと
朝に伝わってしまう

本当の鏡は置かない
自分はどこにもいかない
そういう囚人だから

深海の透明

クジラ
クジラ

星空にもぐる
その巨体が収まる場所を
見つけて喜んでいる

彼は星と星のあいだを渡り
優しい人のために息をした

びりびりとその声が深いのは
人が夜にとけてしまわないため

クジラ
クジラ

彼を見上げる人びとは
誰も彼を覚えていられない

彼は星を揺らしてまわる

またたきでもあれば
人は人のために
祈れることを知っている