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斯くして、2024年2月17日

エンジニアではHRTという考え方というか、姿勢のようなものが尊ばれていてHはHumility、謙虚、RはRespect、尊敬、TはTrust、信頼を表していて、コラボレーションやチームワークを発揮するためにはそれらを大切にせよ、ということを言っている。

Team Geekとかの書籍に書かれている概念なんだけれど、この書籍は僕の大切な書籍の一つだし、実際エンジニアの採用ページを見るに、「HRTをベースに」などと、もはやエンジニアの基本姿勢として正しいものとして扱われているように思う。

で、謙虚、尊敬、信頼なんだけれど、この中でも最も大切にしていて、最も維持しがたい心根は「謙虚」であると思っている。ベクトルがあるとすれば、この3つの中で唯一、自分から自分に向かっているものであるのも、維持を難しくしていることの一つであるように思う。

尊敬は自分から他者へ向いている。正直、自分の周りの人は凄い人ばかりではなかろうか。普通に生きていると、普通に尊敬してしまう。これは僕だけじゃないはずだと思う。凄い人は周りにいくらでもいて、尊敬というのは割と自然発生的に湧いてくる姿勢だ。(ちなみにそれは憧れなのかもしれないので、尊敬と混同すると難しいという話は別にある)

信頼も自分から他者へ向いている。これも難しいと言えば難しいけれど、自己開示をしてちゃんとコミュニケーションを取れば、信頼をする仲間、チームというのは比較的自然発生するように思う。

じゃあ尊敬も信頼も自分が得られるように活動できるかというと、まぁそれは逆にそりゃあ難しかったりするものだけれど、それでも自分の中の姿勢としては尊敬、信頼は体得しやすい概念ではなかろうか。

だけれど謙虚は?

謙虚でいることはとても難しい。少なくとも僕には。謙虚のベクトルは自分から自分に向いている。自分を常に律する必要がある。それでいて、自信とのバランスを絶妙に兼ねなければならない。

仕事でもプライベートでも、関係構図が固定化されて長い時間が経っていくと、コミュニケーションのパイプが強化されるように思う。それは事実でもあって良い面の方が多いだろうけれど、過信しすぎるとコミュニケーションにエゴや歪な自尊心が混入していく。

そういった「毒」が入っても、たぶんコミュニケーションのパイプは一定以上耐えられる。過去の成功体験や、それまでに培った信頼関係や、あるいは利害関係がそのパイプをスペック以上には保たせてくれるのだろう。

なので、さらに勘違いは加速していく。謙虚の沸点はもっと高いものだと勘違いする。関係のパイプはもっと耐えられるんだと、あるいは愉悦感をもって負荷がさらにかけられる。

でもある一定、その「毒」が致死量に達するときがきて、人間関係を深く損傷するときがある。具体的には感情のままに振る舞ったり、ベースの姿勢が間違ってるから言葉選びで素が出てしまったりして、人を傷つける。

「毒」は日々、本当に微量ながら僕らから滲み出し、僕らを蝕んでいく。謙虚とは、そういった「毒」の混入に敏感になりながら、常に自省を求められる。他者からの強力なパワーがポジティブに変換されるわけではなく、自己を整え続ける忍耐力のポジティブさだ。

なので、HRTの中では一番難しいと思う。


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