斯くして、2024年9月14日
おじいちゃんが煮込みカレーを作る人だった。
寸胴鍋でたくさん作って、親族へ配るのだ。リンゴとハチミツがふんだんに入っていたが、香りが強すぎてあまり僕は好きじゃなかった。またおじいちゃんはメンチカツもつくる人だった。パン粉が多く、ニンニクが強すぎて、これもまた特に好きじゃなかった。
でもおじいちゃんが喜んでくれるからいつもありがたく食べていたし、別に嫌いでもなかったから喜んでいたりもした。このカミングアウトはほぼ人生初だが、こんな孫の無邪気な嘘なら天国のおじいちゃんも笑ってくれるに違いない。
その血が僕にも流れているからかどうなのか分からないが、僕もここ一年はスパイスカレーを作り出して、親族に配り始めた。明らかに血じゃねーか。
最初はトマトが酸っぱすぎたり、スパイスが焦げたりしてたので、それと比べるとまぁまぁ食べられる、うまくなってきたようだ。
そもそもなぜスパイスカレーかというと別に理由はない。やはりその辺は血なのかもしれない。何か料理をしようと思って、思い浮かんだのがスパイスカレーだった。割と難しそうで、自分で味を組み立てることができて、それなりに色々そろえなければならない(そろえる余地がある)ものだったからという気もするが、やはり特に理由はない。
ただ、現代の付き合っちゃいけない男3cが、「カメラマン」「クリエイター」「スパイスカレーを作る男」だと揶揄されていて少なからずショックを受けた。おいおい、ふざけんなよ、どう考えても種類違うだろカメラマンとクリエイターと、スパイスカレーを作る男は。だいたいカメラマンもクリエイターだろ。
そんなことを考えていたけれども、ある日、妻がカレーよりパスタが食べたいと言い始めた。めちゃくちゃ暴論なのだけれど、別に僕は料理が好きだったり、人に振る舞いたいからカレーを作っているわけではない。何となく意味はないが作りたいから作っているのだし、別にパスタを作りたいわけではない。書いてていま思ったのだけれど、確かにこんな男と付き合うべきじゃないのかもしれない。
それが何か結構強固に譲らないので、妻に理由を深く聞いてみたところ、出てきた言葉が「別にスパイスカレーが好きではない」ということだった。めちゃくちゃショック。あのおいしいと食べてくれたのは嘘だったというのだろうか。そんな感じで1年強付き合いで食べてくれてたということなのだろうか。おじいちゃん、俺、めちゃくちゃショックだよ。
がっくりきつつ「しかし俺はカレー作りをやめるつもりはない」などと、最後に研究を捨てられず殺されるマッドサイエンティストみたいな捨て台詞を吐いて、「トマトを買ってくる!」と家を出たものの、その時、愛娘が言った。「とーと、パスタ食べたい」「いいよぉ〜〜〜」と、そういうわけで出来上がったのが冒頭のパスタである。
しかし僕はカレー作りもやめるつもりはない。